家族信託制度とは、家族間で資産を管理・運用するために設立される信託のことです。家族信託は、家族の財産を一定の形で守り、相続税の節税対策としても用いられます。以下は、家族信託制度の概要です。
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家族信託の設立
家族信託は、一定の目的を持って設立されます。目的は、家族の財産を保全することや、家族のメンバーに資産を分配することなどがあります。設立には、信託契約書を作成し、信託の目的や受益者、信託財産、信託期間、信託管理者などを明確にする必要があります。
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受益者
家族信託の受益者は、家族のメンバーであり、信託財産を受け取ることができます。受益者には、現在の受益者や将来の受益者が含まれる場合があります。
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信託財産
家族信託の信託財産は、家族の財産を指します。不動産や株式、現金などが含まれます。信託財産は、信託契約書で明確に定義されます。
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信託管理者
家族信託の信託管理者は、信託の管理や運営を行う人物です。信託管理者には、家族の中から選ばれる場合があります。信託管理者は、信託財産を適切に管理し、受益者の利益を守ることが求められます。
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信託の種類
家族信託には、いくつかの種類があります。代表的なものには、生前贈与信託、遺言信託、課税信託などがあります。それぞれの種類によって、目的や税制上のメリットが異なります。
以上が、家族信託制度の概要です。家族信託は、家族の財産を守り、相続税の節税対策にもなるため、家族の資産管理に役立つ制度です。
ただし、信託契約書の作成や信託管理者の選定など、細かい点については専門家のアドバイスを受けることが重要です。
<家族信託制度のメリットとデメリット>
家族信託制度のメリットとデメリットを以下にまとめます。
【メリット】
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財産保全
家族信託は、家族の財産を一定の形で守ることができます。信託契約書で信託の目的や条件を明確に定めることで、財産が無駄に使われたり、紛争が生じたりすることを防止することができます。
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相続税の節税効果
家族信託は、相続税の節税対策にもなります。信託によって財産を移転することで、相続税を回避することができます。また、信託を通じた贈与によって、贈与税の節税効果も期待できます。
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受益者の保護
家族信託は、受益者の利益を守ることができます。信託契約書で受益者の権利や利益を明確に定めることで、受益者が無駄なリスクを負うことを防止することができます。
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柔軟性の高い資産管理
家族信託は、資産管理の柔軟性が高いという特徴があります。信託契約書で、信託の目的や条件を自由に設定できるため、家族のニーズに合わせた資産管理を行うことができます。
【デメリット】
1
設立費用の高さ
家族信託を設立するには、一定の費用が必要です。信託契約書の作成費用や登記費用、税金などがかかるため、費用負担が大きくなる場合があります。
2
経営権の移転
家族信託によって、財産が信託に移転することで、経営権の移転が発生することがあります。信託管理者が財産を管理するため、信託管理者と受益者との間での紛争が発生することがあります。
《実践的アドバイス》
家族信託に関するご相談を相談会などでよくお受けしますが、実際に家族信託を行う方はさほどいません。
その原因としては、
①対象となる財産の額にもよるが手続きの費用の相場が比較的高い印象がある
②不動産を対象に家族信託を行いたいが名義を受託者(子など)に移転させることに委託者(親など)が抵抗感を覚える
③家族信託の制度自体が、将来的な親などの認知症対策として用いられる場合が多い(認知症になると成年後見人制度によらなければならないため、認知症になる前に対策したい)ため、まだすぐにしなければならない必要性を感じない
かと思われます。
しかし一方で、ご相談を受ける内容として「親が認知症になってしまい施設に入ることになったが不動産が売却できず費用を工面できない」というご相談も多いのも事実です。
預貯金が比較的あり、子などがキャッシュカードでお金を引き出すことができる状況であれば問題ないかもしれませんが、施設に10年またはそれ以上入ったままとなる可能性もあるため、そうした資金と費用を考慮したなかで検討することが必要かと思われます。